らすたちゃん

新宿に住んでる20代ダメ女の日々です。たまにレビューとかも。

波のはざまにある空家

ある人の書いた、闘病記を見ていた。
その人は女性で齢およそ15と言ったところにあり、重いアレルギー症に苦しまされていた。
ブログとして公開しているお陰で、わたしはそれを毎日読むことが出来た。
最初は一日に1記事、そして次第に3記事、4記事と更新のある日も増え、たまには数日更新が空く日もあった。
だが彼女はある日、更新を辞めてしまった。
ぱったりと、その日を境にブログは更新されることはなくなってしまった。
わたしには、彼女の日々を知る術は一切なくなってしまった。

実際のところ、彼女について知っていることなど、わたしには殆ど無いのであった。
彼女がアレルギー症だったかどうかも、
年齢が高校に入ったぐらいだということも、
女性なのかということも、
そもそもこんな人が存在していたのかということも、
私に断言することなど一つもできないのであった。
ブログを辞めた理由も、飽きたのか、何かきっかけとなる出来事があったのか、多忙なのか、あるいは彼女自体が遠くに行ってしまったのか、わたしにはわからない。

わたしが知っているのは、彼女がブログに記していった一文字位置文字だけである。
こういう日に誰かがこういう文章を書いていた、そんな事だけである。

生々しかった彼女の筆跡はそのままに、
しかしそのブログは、温かな料理を机に並べたまま空家のように、webの波の中に確かに存在し続けている。
だが、わたしはそのブログの中で何よりも身近に一人の少女として、彼女を感じることが出来るのであった。
ぞっとしつつも、わたしはそれで十分である気がした。

そんな風にして、わたしも自分のことを書いて行ければよいと思っている、というお話。

最後の更新には、一輪の白い花の写真が添えられていた。