らすたちゃん

新宿に住んでる20代ダメ女の日々です。たまにレビューとかも。

【映画】『イントゥ・ザ・ウッズ』とかいう重苦しい現代寓話にわたしがハマった4つの理由【レビュー】

昨日(平日の昼間から)映画館に行き、イントゥ・ザ・ウッズを観てきた。

www.disney.co.jp



感想としては、「わたしは凄く好きだったけれども、世間の評判はもしかしたらあまりよくないのではないのか。」といったところだ。
というのも、世間のというかディズニーの、毒にも薬にもならないハッピーエンドの作品を多く観てそれを好む人達が、この作品のダークで陰鬱とした世界観とストーリーを好むかどうかは、甚だ疑問だからである。
ちなみにツイッターで作品名を入力したら「Oh...」という感じだった。

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これまでのディズニー作品とその作風について語ることはここでは避けたい。なぜなら、これ以上言うのはなんか怖いから!!!


わたしの独断と偏見を許せる人のみ、この映画の魅力を、なるべくネタバレを排除した方向で説明するので、wikipediaを読んだ後にでも目を通してみてほしい。
(ネタバレ絶対イヤ!という人は見ないほうがよいかも。あくまで自己尺度なので…)ネタバレかも?と思う部分は白文字にしてあるので、文字選択すれば読めます。

★★★ここからレビューだよ★★★

まず、この物語のあらすじはこうだ。
『パン屋の夫婦は、魔女の呪いのせいで子どもが授からないでいた。呪いをとくためには、ミルクのように白い牛、赤い頭巾、黄色い毛、金色の靴が必要だと言う。夫婦はそれらを探すために森の中へと入っていく。そこでシンデレラ、赤ずきん、ジャックと豆の木ラプンツェルなどの童話の登場人物たちと出会う。』
(出典:イントゥ・ザ・ウッズ - Wikipedia

それに対し、ディズニーが公式のプロモーションで語ってきた紹介は以下の通り。
『シンデレラ、ラプンツェル、赤ずきん…ディズニーが“おとぎ話の主人公たち”のその後を描く』
(出典:イントゥ・ザ・ウッズ|映画|ディズニー|Disney.jp |


…まぁ間違っては居ないのだが、このディズニーの紹介文句を鵜呑みにしていった(原作を知らない)視聴者は、まずストーリー、とりわけパン屋の存在感に混乱することだろう。
「誰この夫婦…」
「え?この人たち結構な頻度で出てくるけど主要人物!?」
となるのである。

そして、この映画の諸々の特徴は、これまでのディズニーミュージカル作品の”ハッピー””ラブアンドピース””ファミリーフレンドリー”な作風を大きく逸脱しているのである。
(今迄の作品、といってわたしもそんなに沢山見ている訳ではないのだが、例えば「魔法にかけられて」。観ていて「これこれェ!!!」と叫びたくなるほどのハッピーエネルギッシュラブコメであり、これぞディズニーかと思ったものだ。)

1:まず、兎に角メッチャ暗い
全編通して非常に陰鬱とした雰囲気がまとわりついている。
あらすじの部分でも触れたが、予想外に重い湿度を伴い、物語が進むことになる。
(よく知られている物語の主人公達が互いに交錯し運命を泥沼化してゆく展開であるから当然ではあるのだが…。)
そもそも舞台となる「森」が、兎に角暗く恐ろしい。
西洋における「森」は、日本人の感じる森林のイメージと大きくかけ離れている。
健康、平和といったグリーンカラーではなく、「暗く不気味で得体のしれない箱庭」に近い描かれ方をしている。

2:また、童話をモチーフにしている割に、映像美に重きを置いていないように思われる。
アニメではなく実写において、CGによるファンタジー描写ではなく、「ここまで細部見せちゃう?」と思うような写実描写が多い。(ここからネタバレの恐れ↓)
赤ずきんが狼の腹に飲み込まれるシーン等、子供の頃に誰もが頭の中、想像で補ったであろうシーンが、多少デフォルメされてはいるものの詳細に映像化されており、人によっては気持ち悪いと感じるかもしれない。
シンデレラが舞踏会に赴く城も、豪華な装飾を除けば(本当に実際はこんな感じなのだろう)黒々としていて光が無く、寒そうで汚ならしい。
(ネタバレここまで↑)ただここにも、この作品を平和なファンタジーにとどまらせず、現実的でグロテスクな部分も敢えて見せようという、制作側の意図が感じられる。

3:またここで好みが大きくわかれるのだろうが、登場人物がどれも大変に俗世的である
いつまでも長たらしく言い争ったり、議論した末結論が出ないまま動き出したり、自分の信念を容易に曲げたり、他人と比較して嫉妬したり、罪を他人に擦り付けたり、独りよがりだったり、それはもう枚挙にいとまがないほど「嫌らしい」。(ここからネタバレの恐れ↓)
極め付けは浮気とかしちゃう。
(ネタバレここまで↑)子供にこんな展開見せられませんわ、と思う親御さんも多いことだろう。
だが、どれも現代に生きる我々なら、多分に共感できるものがあると思う面ばかりである。
寧ろ今迄のファンタジーでのご都合主義を盛大に忘れ去り、「これこそ人の真理なり」と思わされる、非常に肉感的で魅力的な彼らであった。
キャストも、絶世の美女美男子というよりは「あ、なんか居そう」(失礼!)という容姿が多いのも良かった。
それだけに、随所で入る夢見がちなミュージカル要素は多少浮いていたが…(勿論音楽自体は素晴らしいけれど)。

4:そして最も存在感を持つのが、強烈な教訓の数々である。
「正しく生きなさい」「きっと誰かが助けてくれる」「子供は遠くへ行ってしまう」等、登場人物の台詞からいくつか「これがテーマか」と推察できるものがある。(完コピではない)
こうして並べてみると脈絡のない其々のキーセンテンスであるが、物語を通して受け止めると「なるほど…」となる。
誰もが愛情深く善人で最終的には良い選択をする、という構図では響かないであろう、こうした教訓が、物語後半で視聴者の胸を打つのである。
ハッピーエンドとは異なるが、鑑賞後に不思議な爽快感があると共に、もう一度観たいと思わされる作品であった。

結論:『イントゥ・ザ・ウッズ』は現代寓話。ドキュメンタリー好きな大人こそ観よ!

ちょっと強引だが、否定形を用いずに言えばこういうことになると思う。
まぁわたしは、近年観たディズニー映画では断トツに好きでした。
よければ劇場に脚をお運びください。

あと、内容とは全く関係ないですが、新宿バルド9のフィッシュ&チップスほんとに美味しい。
貧乏舌の自分が言ってもという感じだが、わたしはあれを食べる為に映画館に足を運んでいるといっても過言ではないのである。
なので、うん、まぁ、機会があればそっちも是非。